
2022年10月1日、名古屋市国際展示場コンベンションセンターがオープンしました。
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私は、本計画建物の外装デザインと設計段階のジオメトリーエンジニアリング、入札段階のビジュアライズを主に担当しました。
本ブログでは、入札が行われた2019年から完成まで、この建物の外装デザインに対して考えていたことや、そのプロセスをご紹介したいと思います。
デザインアイデア
設計担当者が私のところへ相談に来た時には、プラン・ボリュームはおおよそ決定していました。
その中で当時設計部長から注文されたことは下記の3点でした。
- アイコニックな建物
- 屋根と外壁が連続したような外装
- コンセプトカーのような前衛的なイメージ
プランニングの段階で、屋外に海を見渡せるデッキが計画されていたこともあり、前衛的な船をモチーフにしたデザインを考えました。
はじめは曲面を用いた案も検討していましたが、コストとのバランスも考慮して、最終的にはポリゴンで構成された案で検討を進めました。



計画敷地は、ほぼ整形な2等辺直角三角形でした。
この敷地に対して、普通に建物を計画しようとすれば、層状のシンプルな切り分けられたショートケーキのような形になることが予想されます。今回は複数の競合他社がいることも想定されていたため、他社のデザインとの差別化も考慮する必要がありました。

したがって今回は、直角二等辺三角形の特徴的な敷地形状に捉われすぎず、デッキやデッキに接続する屋外階段を強調し、隆起する外装が、各機能ボリュームを包みながら軒裏やインテリアまで展開されるようなデザインを考案しました。





また、デッキや屋外階段からも建物の外装を視認できるように、外皮を内側へ折り込みました。この建物の特徴的な形態を、海への眺望を確保しながら、多視点から認識できる形態を模索しました。


隣接する展示場の連絡通路からのアクセスに配慮し、迎え入れるようなエントランスを構成しました。


今回の外装コンセプトは、同時にオープンした隣接する名古屋市国際展示場新第一展示館の外装コンセプトと対照的なアイデアでした。実は、新第一展示館も外装モデリングやジオメトリーエンジニアリング、ビジュアライズなどで参画していました。新第一展示館は、アルゴリズムによって柱・梁・壁が配置されており、再現性のある規則的な外装デザインです。対して、コンベンションセンターは再現性が低く、模倣されにくい独創性の高い形態を目指しました。


形態検討・モデリング
多角形の面で構成されたデザインを検討する上で、設計の初期段階はBlenderによるポリゴンモデリングを採用しました。
アイレベルでモニターしながら形状をスタディし、アイレベルで建物の表情が豊かに見えるように検討しました。
形態検討の中で、コストバランスや全体のおおらかさを考慮して、一部の三角形を四角形へ変形し、面・稜線を削減しました。生成された多角形において、各面に歪みが発生しないように、歪みの大きさに応じて面に色を付けながら修正しました。

モデリング修正後にレンダリングして確認するのではなく、形態検討と同時に外観の見え方を確認しました。今回の外装デザイン検討では、修正がリアルタイムで反映されるという形態検討の理想系を追求しました。
また、模型を手作業で作ることが難しかったため、サポート材不要の粉末積層による3Dプリンタを活用しました。

検討したモデルをBlenderからRhinocerosへ書き出し、Grasshopper + GH Pythonでジオメトリを再生成し、外装の面積・辺長を算出することで積算を行いました。また、ArchiCADへ書き出し、立面図の下絵となる図面を発行しました。



詳細設計段階では、建築・構造・設備のBIMモデルを重ね合わせて外装面との干渉を確認し、形態を再度修正しました。また、設計担当者が検討した外装の詳細なおさまりを反映したモデルを作成しました。細かい話ですが、それぞれの外装面同士は、雨仕舞の関係で完全にシームレスではなく勝ち負けがついています。



今回の外装は、独創性も追及したために、細かなおさまりの調整や下地の検討、現地の施工など、関係者の皆様には非常にご面倒をおかけしました。


竣工後の夕景・夜景写真です。




竣工に導いてくださった皆様、本当にありがとうございました!
本作のデザインプロセスについては、CGWORLD デザインビズカンファレンス 2022夏に登壇した際も触れました。特集としてまとめていただいていますので、是非ご覧になってください。👇👇