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3Dプリントコンテスト 制作過程

SK本舗さん主催の3Dプリントコンテストに提出した金剛夜叉明王像の制作過程についてご紹介します。

本コンテストは鬼を題材にした、3Dプリント可能な3Dモデルの作品を募集するものでした。

コンテストの概要はこちら👇👇

今回は、金剛夜叉明王を、現代の人間のような顔立ち・体格となるようなアレンジを加えた作品にしてみました。

金剛夜叉明王像とは、五大明王の一尊。かつては人を襲っては喰らう恐るべき夜叉・鬼であり、人々の畏怖の対象でしたが、後に大日如来の威徳によって善に目覚め、仏教の守護神五大明王の一角となりました。一切の悪衆生と三世(過去・現在・未来)の様々な欲望・悪を 金剛杵で打ち砕くとされています。

三面六臂(顔が3つ、腕が6本)で、正面の顔に眼が5つあるのが特徴です。

人々を脅かすのではなく守護する鬼として、本コンテストの題材に選びました。

リファレンス収集

作品制作にあたって、まず金剛夜叉明王のリファレンスを集めました。

画像では確認できない箇所があったため、実物を見るために京都の東寺へ向かいました。五大明王は講堂の中に納められていますが、金剛夜叉明王像は奥の方に配置されており、見えにくく、写真撮影もできませんでした。そのためアップの写真など掲載されている図集を購入しました。

人体のリファレンスです。あらためて筋肉の構造を確認してみます。自分が普段鍛えていない背中や下半身の筋肉に対する知識が不足していることがよくわかりました。

人間の顔のリファレンスです。今回は竹野内豊さんをリファレンスに選びました。薄い顔をしているわけではないですが、西洋人のような濃さがあるわけではない、絶妙なバランスだと思いました。あくまで構造の参考なので、この顔を目指していくわけではありません。

ポーズのリファレンスです。威嚇するわけではないものの、キャラクターの強さがにじみ出ているポーズを参考にしたいと思いました。

法具のリファレンスです。

モデル制作

人体のベースメッシュを用意します。

ベースメッシュに対して、スカルプトツールで筋肉を彫り込んでいきます。

細かい筋線維も追加していきます。

顔の造形も追加していきます。

目が5つありますが、顔の皺と違和感のないように造形を考えています。

髪の毛を追加していきます。

髪飾りを合わせて、頭部の造形を考えていきます。

胸の飾りも作成していきます。

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条帛(じょうはく)を作成。布シミュレーションとスカルプトを併用しています。最終的にはこの条帛がないモデルを提出しました。

爪の表現を追加します。

手のしわを追加。

ボーンを追加してポーズをつけていきます。Rigifyのmetarigを活用しています。

腕が6本あるので、ボーンを複製して調整します。

リグに変換。Rigifyで自動生成しました。

リグによって各部位を簡単に動かせるようになりました。

正面の顔は目が5つあるので、既存の人間用リグがそのまま使えません。複数の目が同時にターゲットを追うように調整しました。

火焔を追加しました。

この状態でテストレンダリングしてみます。本格的にポーズをつけていませんが、CG上では問題なさそうです。

法具をモデリングしていきます。

宝剣

金剛杵(こんごうしょ):密教における煩悩を打ち砕く法具

金剛鈴

装飾品をリグにアタッチしていきます。

大方のモデリングが終わったのでポーズを検討します。

ポーズが決まってきたら、裳(腰から下にまとった衣服)を作成します。

風を使った布シミュレーションを実施。

シミュレーション後にスカルプトでディテールを追加。太ももの筋肉が見えるように調整しました。

台座を制作します。

蓮華座

岩座

岩はスカルプトでディテールを追加します。

すべてのモデリングが終わったのでレンダリングしてみます。

ライティングとマテリアルを追加。ライティングは、実際の堂内の仏像展示に近づけるため、自然光のみとしました。

マテリアルはエイジングされたような印象にしました。

3Dプリント

サブディヴィジョンのレベルを下げないとスライサソフトで読み込めませんでした。とりあえず1.7GB→965MBに下げました。

スライサソフトで読み込みができても、今度はスライスの自動計算ができないようでした。ポリゴン数をさらに削減しました。

スライスできましたが、一部欠損していました。

今回はコピーして作成した腕の方の部分が閉じてませんでした。

うまく読み込みができました。

3Dプリンタで出力した結果です。

まず1/10で出力しましたが、指や髪のような細かい部位が正しく出力できませんでした。造形スピードを落とすか、1/5以上で出力した方が良いかもしれません。

1/5で出力。造形の崩れはありませんが、サポート材の除去が大変でした。

髪の毛の細かい箇所以外は割と綺麗に出力できたと思います。

今回はCGのコンテストではなく、3Dプリントで出力できるモデルのコンテストということで、普段より試行錯誤が多く大変でしたが良い経験となりました!