モルタルが織りなす柔らかく原始的な住処
本プロジェクトは、モルタルの積層によって、布のような柔らかな形態を実現した3Dプリント住宅の実験的プロジェクトである。
積層を安定させるために設けられたドレープの揺らぎは、構造躯体や設備配管を内包しながら、これまでにない流線的な外皮を形成する。
外部的なマテリアルであるモルタルを内外に連続して用い、複雑な曲面形状をもつこの住宅は、直線や矩形に支配されてきた住宅のプランを解放し、洞窟のような原始的な空間体験へと導く。


■形態と空間
柔らかく波打つ壁は、住戸全体を包み込むと同時に、構造体と設備を内包する。
ドレープの凹部にはサッシが飲み込まれ、凸部には柱や配管が隠され、機能と造形が一体化した構成となっている。
細かなドレープ形状と粗い表面は、ハイテクでありながら不確実性を伴う大型アディティブ造形の特性を、意匠的に緩やかに吸収していく。

モックアップとして製作した2枚の低い壁面は、物置や視線制御の塀として外壁にオフセット配置され、前面道路からの圧迫感を軽減しつつ、複層するドレープの一部を構成している。有機的な外形は植栽や周囲の山並みと融和し、既視感のない風景を生み出す。


外壁が内部に入り込む1階の玄関・水回り空間では、単一素材の壁面でありながら、ドレープの多い外壁と落ち着いた内壁を同時に体験することができる。
スカイライトから落ちる光が積層された曲面を伝って拡散し、時間と共に陰影が移ろう内部空間を形成する。


モルタル3Dプリントによる精度と誤差、粗さと滑らかさが共存する空間は、人と材料、機械と環境が拮抗しながら形を成すプロセスそのものを可視化している。
「drape」は、最先端のテクノロジーを用いながらも、最終的に人の感覚に寄り添う、原始的ハイテク住宅の新しいかたちである。

■技術と新しい建築体系
本計画では、ガントリー型モルタル3Dプリンターを現場に設置し、モルタルを積層して構築するプロセスを採用した。
3DCGによる柔軟なモデリング、高精度なレンダリング、パラメトリックスタディなどの設計ツールと、ロボット施工・自走式墨出機・3Dスキャナなどの施工ツールを連携させることで、従来の設計検討・施工工程・工種・見積のあり方を見直し、新しい建築生産体系の可能性を提示する。













Rendering :
Shiotsuki Takuya
Photo :
Shiotsuki Takuya
Partners :
株式会社 築
株式会社オノコム
SHIRAKU inc.
株式会社構造計画研究所
株式会社セーファ
ANDO設備設計
株式会社ファクトリー・アート・スケープ
株式会社LIXIL
帝人フロンティア株式会社
山口産業株式会社
昭和化学工業株式会社
積水化成品工業株式会社
シーカ・ジャパン株式会社
ゆうき総業株式会社
フォンテ トレーディング株式会社
株式会社 積彩
Spacewasp
ウインテック
株式会社JFDエンジニアリング
株式会社 BLINK
ショーボンド建設株式会社
SCG
2025
